- 雨漏りの可能性があるから防水工事をしたい
- 雨漏りしているから補修工事をしたい
と思い業者に依頼したところ、塗膜防水工事を紹介された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ただ、適切価格なのか、本当に塗膜防水工事で良いのか判断できない方も多いと思います。
この記事では塗膜防水の特徴や耐久年数、適している場所や他の防水施工法と違う点などを、一級防水施工技能士の職人が詳しく紹介していきます。
塗膜防水とは
塗膜防水とは、液状の防水材を複数回塗り、化学反応で防水の膜(防水層)を作る施工法です。
液体状の塗料を塗布することから塗布防水とも呼ばれています。
継ぎ目のない防水層を形成する施工法のため、隙間から雨漏りする心配もなく、美観にも優れているといった特徴があります。
価格も比較的安価な上、施工する面の広さや複雑な形状の場所であっても施工しやすいため、防水工事の中でも最も使われている防水施工法となっています。
塗膜防水のメリット・デメリット
ここからは塗膜防水のメリットとデメリットを、それぞれ詳しく紹介していきましょう。
塗膜防水の4つのメリット
塗膜防水のメリットには、以下の4つがあります。
- 段差や複雑な形状でも施工可能
- 施工費用・メンテナンス費用が安い
- 施工にかかる期間が短い
- 建物への負担が少ない
では、それぞれのメリットについて解説していきます。
メリット1)段差や複雑な形状でも施工可能
塗膜防水は液状の防水材を重ね塗りして防水層を作るため、段差や複雑な形状の場所でも施工可能。
ベランダや屋上には、ドレン(排水溝)や室外機が設置されていたり、凸凹ができたり、複雑な形状になっていたりします。
このような特殊な形状でも対応できるので、あらゆる場所で採用されています。
メリット2)施工費用・メンテナンス費用が安い
他の防水施工法に比べると、施工費用やメンテナンス費用が比較的安価です。
工事に使う材料や機材が少なく、作業自体も防水材を塗るだけなので、費用を抑えられます。
また、メンテナンスの場合、既存の防水層があっても撤去の必要がないため、その分費用が安価です。
メリット3)施工にかかる期間が短い
塗膜防水は、短期間で施行できることもメリットの一つです。
施工に必要な機材が少なく工期が短いため、結果的に費用も抑えられます。
メリット4)建物への負担が少ない
液状の防水材で作った防水層は軽量のため、建物にかかる重量負担が抑えられます。
防水層が重いと、建物全体の傾き・沈下や、床が崩落に繋がる可能性があります。
そのため、防水シートを貼る防水施工法に比べると非常に軽く、お住まいへの負担が少ないです。
塗膜防水の4つのデメリット
塗膜防水はメリットの多い施工である一方、知っておくべきデメリットもあります。
- 職人の技術が仕上がりを大きく左右する
- 5年に1度メンテナンスが必要
- 施工中にウレタン樹脂の匂いが出る
- 広い面積の防水施工には不向き
デメリット1)職人の技術が仕上がりを大きく左右する
防水材を手作業で職人が塗るため、職人の技量によって仕上がりが大きく左右されます。
塗料を塗る作業は、一見簡単そうに感じると思いますが、ムラなく均一に塗るには高度な技術と経験が必要です。
また、薄く塗ってしまうと、剥がれや膨れなどの劣化が起こりやすく、雨漏りの原因となります。
デメリット2)5年に1度メンテナンスが必要
塗膜防水は防水層を保護するために、トップコートという塗料材を最後に塗ります。
トップコートによって防水層は保護されているため、10~15年は問題なく生活できます。
ただ、塗膜防水は安価で施工できる反面、トップコートが劣化してくると防水機能が低くなるため、5年ごとの塗り替えなどのメンテナンスが欠かせません。
デメリット3)施工中に塗料の匂いが出る
施工中は塗料独特の匂いが発生します。
室内から近いベランダやバルコニーといった場所の防水工事の場合、匂いが気になることがあるかもしれません。
ただ、施工が終われば匂いは残りません。
デメリット4)広い面積の防水施工には不向き
手作業で複数回塗り進める塗膜防水は、広い場所の工事には向きません。
防水材を乾かのに時間がかかるため、シート防水など他の防水施工法の方が短い工期で施工できます。
2種類ある塗膜防水の特徴と耐久年数
塗膜防水には、大きく分けると「ウレタン防水」と「FRP防水」の2種類があります。
それぞれの特徴や耐久年数は、下記の通りです。
防水工事 | 特徴 | 向いている場所 | 耐久年数 |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | ・面積の広さや材質を問わずに施工できる ・施工費用・メンテナンス費用が安い ・建物に負担がかかりづらい | 複雑な形状の屋上やベランダ | 10〜15年 |
FRP防水 | ・軽く耐久性型が高い ・施工にかかる期間が短い ・建物への負担が少ない | 木造住宅 | 10年 |
施工費が安く汎用性が高い「ウレタン防水」
ウレタン防水とは、液体状のウレタン樹脂を複数回塗って、防水層を作る塗膜防水の一種です。
段差や複雑な形状の場所など、どんな場所にも適応する汎用性があるため、数ある防水施工の中でも施工される割合が高い施工法となっています。
屋根の雨漏り修理のほか、屋上・ベランダ・ビルの改修工事など、さまざまな用途で適用可能。
ウレタン防水にも様々な施工法がありますが、その中でも「密着工法」と「通気緩衡工法」は採用されることが多い施工法です。
工期が短く費用も安価な「密着工法」
密着工法とは、下地に直接ウレタン樹脂を塗り防水層を作る施工法です。
工程が少ないため、ウレタン防水の中でも比較的工期が短く、工事費用も安価なことが特徴。
下地の影響を受けやすく、下地をしっかり乾燥させてから施工しないと、防水層のひび割れ・膨れなどの劣化が発生しやすくなります。
そのため、既に水を含んでしまっている下地の上に防水工事を行うのであれば、次の工法がお勧めです。
耐久性・通気性が高い「通気緩衝工法」
通気緩衝工法とは、絶縁工法とも呼ばれている防水施工法で、下地と防水材の間に通気緩衝シートを挟み、下地と防水材を直接密着させずに防水層を形成する施工法。
通気緩衝シートには無数の穴が空いているため、通気性が確保されており、下地の水分や湿気を逃す効果があります。
そのため、気温が高い時などに発生する下地からの蒸気によって、防水層が膨れることを防いでくれます。
雨漏りを起こしている場合、密着工法だと水分を外に排出できず、すぐに劣化してしまうため、耐久性の高い通気緩衝工法が採用されることが多いです。
工期と費用がかかりますが、密着工法よりも防水効果を長持ちさせられるでしょう。
軽量かつ強度が高い「FRP防水」
FRP防水は、ガラス繊維とプラスチック樹脂を混ぜたFRPシートを敷き、樹脂を塗って防水層を形成する工法。
ちなみに、FRPとは補強剤であるガラス繊維を混ぜた「繊維強化プラスチック」の略です。
軽量かつ強度が高いという特徴があり、防水性だけでなく、腐食や摩擦なども優れています。
そのため、人の歩行が多いベランダ・バルコニーなどに使われている防水施工法です。
ウレタン防水に比べると、均一に施工しやすく、速乾性があり工期が短いことも大きな魅力です。
塗膜防水と他の防水施工法との違い
塗膜防水のメリット・デメリットを紹介してきました。
では、他の防水施工法と塗膜防水はどのように違うのでしょうか。
それぞれの施工法に特徴があるため、施工場所にあった適切な工法を選ぶことが大切です。
ここでは、「ウレタン防水」「FRP防水」「塩ビシート防水」「アスファルト防水」の4つの防水工事の比較を、わかりやすく以下の表にまとめました。
防水工事 | 特徴 | 向いている場所 | 耐用年数 |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | ・面積の広さや材質を問わずに施工できる ・施工費用・メンテナンス費用が安い ・建物に負担がかかりづらい | 複雑な形状の屋上やベランダ | 10〜15年 |
FRP防水 | ・軽く耐久性型が高い ・施工にかかる期間が短い ・建物への負担が少ない | 木造住宅 | 10年 |
塩ビ防水(シート防水) | ・下地表面に凹凸があっても仕上がりが均一 ・既存の防水層の上からでも、防水施工できる ・低コスト短納期 | 大型施設や大きな建物の屋上 | 10〜15年 |
アスファルト防水 | ・耐用年数が長い ・防水性が高い | 大型施設や大きな建物の屋上 | 15〜30年 |
塗膜防水と塩ビ防水との違い
塩ビ防水とは、塩化ビニール樹脂で作られた防水シートを使い、防水層を作る防水施工法。
一見すると、塗膜防水と見分けがつきにくいですが、塗膜防水はつなぎ目がなくシームレスなのに対し、塩ビ防水は一定間隔でシートが重なる部分があり、直線状のラインが入ります。
ウレタン防水のように塗料を乾かす時間が必要ないため、広い面積の防水施工を行う場合、塩ビ防水の方が短期間で施工できます。
塩ビ防水の機械固定工法は、下地に多少の凸凹があっても均一な仕上がりになるのが特徴。
ただし塩ビ防水はつなぎ目ができるので、施工不良による浸水には注意が必要です。
塗膜防水とアスファルト防水との違い
アスファルト防水とは、防水シートを熱で溶かした防水工事用のアスファルトで張り付けて防水層を形成する施工法です。
塗膜防水の耐久年数は10年〜15年ですが、アスファルト防水の耐久年数は15年〜25年と、耐久性が高いことが特徴。
工法によっては溶解窯という大型の設備が必要となるため、施工できる場所は限られますが、改質アスファルト防水と呼ばれる施工法なら大型の設備を使わないため、狭い箇所での施工も可能です。
塗膜防水は頻繁にメンテナンスが必要ですが、アスファルト防水は定期メンテナンスの必要はありません。
そのため、メンテナンスや改修工事をしづらい建物に向いている施工法です。
塗膜防水の補修・メンテナンスのタイミング
塗膜防水のメンテナンス時期や、補修が必要な劣化のサインを把握し、早めの対処を心がけましょう。
メンテナンス時期
塗膜防水の耐久年数は10~15年ほどです。
ただ、防水効果を10年以上長持ちさせるためには、5年に1度のトップコートの塗り直しが必要です。
トップコートとは、防水工事の仕上げとして防水層の表面に塗るもので、紫外線から防水層を守る役割があります。
そのトップコートが剥がれると、防水層が紫外線によって硬化・亀裂を起こし、防水機能が低下してしまいます。
特に、ウレタン防水の塗料に含まれる樹脂は、紫外線に弱い特性を持っているため、トップコートは5年程度を目安に塗り替えましょう。
劣化のサイン
防水層に不具合があればその都度、補修・メンテナンスを行う必要があります。
補修・メンテナンスが必要になるタイミングは、下記4つです。
このいずれかに当てはまった場合は、業者へ相談をお勧めします。
- トップコートの変色ひび割れ・剥がれ
- トップコートのひび割れ・剥がれ
- トップコートのチョーキング現象
- 雨漏り
トップコートの変色
摩擦や紫外線によってトップコートは変色していきます。
変色は比較的緊急性のない劣化症状ですが、トップコート全体の劣化の初期現象のため、メンテナンスを検討しましょう。
トップコートのひび割れ・剥がれ
防水層は建物の振動や温度変化によって膨張・収縮を繰り返しています。
経年劣化してきたトップコートがこの膨張・収縮に耐えられなくなり、ひび割れ・剥がれが起こります。
症状を放置していると、その下の防水層まで紫外線や雨水の影響で劣化してしまうため、可能な限り早急な対処が重要です。
トップコートのチョーキング現象
チョーキング現象が起こると、塗装面を触った時にチョークのような粉が手に付着します。
紫外線の影響でトップコートの表面が剥がれて白い粉状になっている状態のため、防水層を保護する機能が弱まっています。
チョーキング現象を放置していると、トップコートがひび割れや剥がれを引き起こす可能性があるので、早めにメンテナンスを行いましょう。
雨漏り
雨漏りの原因にはいくつかありますが、その一つが防水層の劣化による浸水です。
防水層の劣化が進んでしまうと、雨漏りを防ぐ効果が低下し、雨水が建物内部に侵入してしまいます。
雨漏りは他の部分にまで被害が広がる可能性があるため、早めに業者へ雨漏り修理の依頼をしましょう。
自分でもメンテナンスできる?
「工事費用を抑えたい」「信頼できる業者選びが大変」などの理由から、自分でメンテナンスしたい方もいるかと思います。
トップコートを塗り替えるだけなら、それほど難しい作業ではありません。
しかし、ご自身でメンテナンスする際は、以下3つのリスクがあります。
- 下地や防水層の劣化を見落とす可能性がある
- 失敗してひび割れや剥がれの原因になる
- 使用する塗料や施工が間違っていると、後から業者に依頼した際に費用が高くなる可能性がある
これらのリスクがあるため、自分でメンテナンスするのが不安に思った方は、業者に依頼するのがお勧めです。
塗膜防水は業者とのコミュニケーションが大切
防水工事には様々な種類の施工法があるため、場所によって最適な工法を選ぶ必要があります。
場所を選ばず施工できる塗膜防水は、施工にかかる期間が短く、施工費用やメンテナンス費用が安価なのが特徴です。
ただ、塗膜防水は職人の技量で仕上がりが変わるため、依頼先をしっかり調べて、業者とコミュニケーションを取ってから契約しましょう。
とはいえ、建物の状況に最適な防水施工法をご自身で判断するのは難しいと思います。
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